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  • 2022年04月08日健康栄養

    動脈硬化の新たな危険因子として注目される慢性炎症とは?【医師執筆コラム】

    新たな動脈硬化の危険因子である「慢性炎症」とは?

    炎症

    執筆者:天野方一先生

    一般的な動脈硬化のリスク因子は喫煙、肥満や高血圧などが考えられています。

     

    しかし、これらの古典的な危険因子以外にも体の中に発生する慢性炎症が動脈硬化の原因であることが最近の研究で分かってきています。

     

    慢性炎症とは、体内で静かに炎症が起きていく炎症です。

     

    ケガをしたときに皮膚が赤くなり、痛みを感じ、はれたりします。これは体内で起こっている急性な炎症で、ケガや病気になった時に突然生じる「急性炎症」です。これに対して、明らかな症状がないにも関わらず、体内で静かに炎症が起きていく炎症を「慢性炎症」といいます。

     

    慢性炎症と関係する疾患

    最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連がないと思われていた疾患も、実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。更には老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられるようになってきています。

     

    慢性炎症と関連している可能性が高い疾患

    動脈硬化関連疾患(高血圧症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病など)

    糖尿病

    様々な癌(悪性疾患)

    アルツハイマー型認知症

     

    慢性炎症が関連している可能性がある疾患

    喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患

    慢性疲労症候群

    副腎不全など

     

    肥満と慢性炎症について

    我々の脂肪細胞からアディポネクチンというホルモンが分泌されています。アディポネクチンはインスリン感受性を上げたり、脂肪酸の分解促進や血管の拡張作用があると言われており、高ければ高いほどよいです。つまり、超善玉ホルモン、スーパー健康ホルモンであります。

     

    しかし、我々が太って肥満になると脂肪細胞からアディポネクチンの分泌が低下してしまいます。低下すると糖尿病、心筋梗塞やメタボリックシンドロームになりやすくなるといわれています。更にこれらの疾患のリスクになるではなく体内の炎症も高くなってしまうといわれています。肥満が動脈硬化のリスクである理由の一つに慢性炎症が関係していると考えられています。

     

    全身の慢性炎症がおこりやすい生活習慣

    炭水化物(糖質)の過剰摂取

    摂取した糖質の量が多すぎると、血液中のグルコース(ブドウ糖)が過剰になります。そして過剰のグルコースは細胞や組織のたんぱく質と結びつき、「糖化」が起こります。糖化されたたんぱく質はAGEsになります。このAGEsが様々な臓器障害や全身の炎症を引きおこすといわれています。

     

    飽和脂肪酸の過剰摂取

    一般生活者20人に、飽和脂肪酸の多い食事か、または不飽和脂肪酸の多い食事を、8週間続けてもらう研究がオランダで行われました。その結果、飽和脂肪酸の多い食事をした群では、脂肪組織で炎症に関わる遺伝子が多く発現していました。つまり、炎症が起きている、または起きやすい体になっていることを示しています。

     

    過剰な塩分摂取

    高血圧の人を対象に行った研究では、食塩の摂取が多いほど炎症マーカーの一つであるCRPが高いとの結果がでており、過剰な塩分接種は体内で慢性炎症が進行させている可能性があります。

     

    他にも喫煙や運動不足が全身の慢性炎症と関係していることが多くの過去の研究で報告されています。

     

    慢性炎症を下げる生活習慣

    基本的には適切な食事と運動をすることが重要です。それに加えて、下記の食生活も慢性炎症を下げるのに有効と考えられています。

     

    オメガ(ω)3脂肪酸の摂取

    東北地方の男女14,191人を対象に行った研究では、食品中に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取が多い人は少ない人と比較して、全身の炎症値を示すCRPというマーカーが低い結果がでました。この関係性は男性喫煙者群でより明確に観察されました。

     

    オメガ3脂肪酸の多い食物

    オメガ3脂肪酸はえごま油、シソ油、亜麻仁油、くるみ、チアシード、グリーンナッツオイル、青魚(サバ・イワシ・アジ・マグロ、サーモンなど)、緑黄色野菜、豆類などの食品に含まれています。

     

    更にオメガ3脂肪酸を多くとると、心筋梗塞や動脈硬化になりにくく、喘息などのアレルギー性疾患の予防、将来の認知症予防などの効果もあるといわれています。

     

    つまり、現代人は慢性炎症を下げることとは関係なく、オメガ3脂肪酸を多く含む食事を多くとるべきなのです。

     

    適度な運動

    運動は体内の炎症を下げることが期待されています。

     

    数千人を対象にした研究では、軽い運動を週1回以上行う人は体内の炎症値が低かったことがわかっています。

     

    まとめ

    慢性炎症は動脈硬化疾患の共通した発症リスクです。慢性炎症を上げないような生活習慣を意識することがアンチエイジング及び健康への第一歩になります。

     

    天野方一

    方一先生

    2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

     

    予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

     

    2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、?The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」?について研究予定。

     

    資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

    公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

     

    参考文献

    Associations of elevated Interleukin-6 and C-Reactive protein levels with mortality in the elderly. Am J Med. 1999; 106: 506-12.

    Serum C-reactive protein levels can be used to predict future ischemic stroke and mortality in Japanese men from the general population. Atherosclerosis. 2009; 204: 234-38.

    Associations between nut consumption and inflammatory biomarkers. Am J Clin Nutr. 2016; 104: 722-8

    A saturated fatty acid-rich diet induces an obesity-linked proinflammatory gene expression profile in adipose tissue of subjects at risk of metabolic syndrome. Send to

    Am J Clin Nutr. 2009; 90: 1656-64

    Interleukin-6 Level among Shift and Night Workers in Japan: Cross-Sectional Analysis of the J-HOPE Study. J Atheroscler Thromb. 2018 (in press)

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