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  • 2022年04月08日健康栄養

    「ポジティブ感情」を持つための生活習慣【医師執筆コラム】

    2018年7月30日

    ポジティブ感情

    執筆者:天野方一先生

    1.友人や家族との質の高い関係を築くことが大切

    ハーバード大学には80年間続いている「 成人発達研究 」という有名な調査があります。

     

    対象は、1938年当時ハーバード大学の2年生だった男性268人(のちの第35代大統領となるジョン・F・ケネディ氏もこのうちの一人でした)と、ボストンの最貧地区に住む男性456人です。参加者は2年に一度配偶者との関係や仕事の状況などについてアンケートに答えたり、5年に一度健康についての情報を提出したりするほか、5~10年に一度は研究者と面談を行います。

     

    この研究から、世界的に恵まれた環境(ハーバードの学生)と恵まれていない環境(最貧地区)、どちらのグループにおいても、健康で幸せに年を取るためには、「周囲の人と良い人間関係を構築すること」が最も重要であるとういうことがわかりました。

     

    「周囲との繋がり」で重要なのは人数ではなく質であり、特にパートナーとの関係は重要であることもわかりました。

     

    2.禁煙

    英国・バーミンガム大学が行った結果を紹介します。

     

    研究は、喫煙者を対象にして、喫煙継続時または禁煙後の精神的な健康状態について評価を行った26個の過去の研究をまとめたものです。

     

    結果は、禁煙者が喫煙継続者に比べてポジティブ感情についての上昇を認めました。また、喫煙継続者に比べて禁煙者は不安、うつ症状、ストレスといったネガティブな感情の症状が軽減されていました。

     

    喫煙は一時的には前向きになるかもしれませんが、長期的に見ればポジティブ感情を生み出していない可能性があります6

     

    3.食事や運動

    定期的な魚の摂取、定期的な運動や禁煙が、ポジティブ感情の1つであるワークエンゲージメント(≒仕事に誇り、やりがいを感じている状態のこと)の数値を高くしていました7

     

    また、ネガティブ感情を持つうつ病患者においては、果物、マメ科植物(大豆、インゲン、えんどう豆など)やナッツの摂取量が少ないこともわかっています8

     

    魚や豆類が多い「地中海食」か「伝統的な和食」は、身体の健康面のみではなく、ポジティブ感情などの精神面にも影響する可能性があります。

     

    4.その他の方法

    ポジティブ感情を持つための方法には、生活習慣の改善以外には、その人の強み(長所、取柄、利点)に焦点を当てる「日々の良いこと、できたことの振り返り法」や「マインドフルネス療法」などもあるということが証明されていますが、これについてはまた別の機会にご紹介したいと思います。

     

    まとめ

    ポジティブ感情と健康との因果関係は、まだすべてが証明されたわけではありません。しかし、ネガティブ感情が強い人はさまざまなホルモンや細胞から分泌されるタンパク質などを介して、体内の慢性炎症を悪化させ、その結果様々な疾患発症のリスクを保有することになると考えられています。その一方で、「良い方向へ解釈しようとする人」(ポジティブ感情を持っている人)は、炎症の状態が軽い傾向があることがわかっています。

     

    ポジティブ感情をうまく利用すれば、病気になる要因を軽減するだけでなく、心も体も健康であることを維持することもできるでしょう。

     

    天野方一

    方一先生

    2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

     

    予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

     

    2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、?The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」?について研究予定。

     

    資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

    公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

     

    参考文献

    1. Perceived level of life enjoyment and risks of cardiovascular disease incidence and mortality: the Japan public health center-based study. Circulation. 2009 Sep 15;120(11):956-63.
    2. Positive and negative affect and risk of coronary heart disease: Whitehall II prospective cohort study. BMJ. 2008 Jun 30;337:a118.
    3. Association between poor psychosocial conditions and diabetic nephropathy in Japanese type 2 diabetes patients: A cross-sectional study. J Diabetes Investig. 2018 Jan;9(1):162-172.
    4. Laughter lowered the increase in postprandial blood glucose.Diabetes Care.2003;26:1651-1652. 6
    5. Emotional well-being predicts subsequent functional independence and survival. J Am Geriatr Soc. 2000 May;48(5):473-8.
    6. Change in mental health after smoking cessation: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2014 Feb 13;348:g1151
    7. Personal lifestyle as a resource for work engagement. J Occup Health. 2017;59:17-23.
    8. Total antioxidant capacity of diet and serum, dietary antioxidant vitamins intake, and serum hs-CRP levels in relation to depression scales in university male students. Redox Rep. 2014 ;19:133-9.
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